知能指数の不思議

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 知能指数について不思議なことがあるんです。どこの国でもそうなんですが、年々、人々の知能指数が上がっているのです。その上がり具合と言うものが、一世代について5点から25点ほどになります。IQと言うものは平均が100ですから、ある子の知能指数が100だったとすると、その子が大人になるころには、最大125位まで上がってしまうことになります。

 人口全体の知能指数が上がっているのですから、自分だけが利口になっていて得すると言うことはないのです。しかし、その得点の内容を調べてみますと、面白いことがあります。言語性知能指数より非言語性、すなわち視覚的、動作的な知能の方が上昇しているということです。これはコンピューターゲームのやりすぎなのでしょうか。

 そういうわけでもなさそうです。つまり、コンピューターやテレビゲームが盛んになった現代社会以前にも知能指数上昇の事実がありましたから。でも、昔からみると、現代の人はもっと複雑な形や絵や空間を理解し、もっと素早く手を動かしているというような気がします。

 まあ、皆さんそろって頭がよくなっているのですから、よいニュースと言えるかもしれませんが、困ったこともあるのです。それは、年々、精神遅滞(知恵遅れ)に属する子供が少なくなってしまうことです。知能指数が上がることによって、例えばこれまで精神遅滞の子が20人いたとすれば、それが10人になってしまいます。

 なぜこれが問題かと言いますと、精神遅滞のグループからはずれた、すなわち頭のよくなった子は、それまで学校で特別教育を受けていたのですが、それが受けられなくなってしまうのです。なぜなら、精神遅滞はIQが70以下と定義されており、ある子が71以上のIQをとってしまいますと、精神遅滞でなくなってしまいます。その子達の周りの子も、知能知数が上がっていますので、精神遅滞からはずれた子は、以前と同じようにクラスで学習問題がありますし、それゆえ以前と同じように特別教育が必要なのです。

 この問題を解決するために、20年位に一度IQテストを難しくします。すなわち一世代かかって何点か上がった知能指数をテストを難しくすることによって下げ、平均点がまた100になるようにセットするのです。何か損をした感じです。実際にはIQが増えて賢くなったかもしれませんが、人口全体が賢くなりましたので、変わりはないように見えるわけです。そうしますと、枠から外れた精神遅滞の子供は、また精神遅滞の枠に入り、学校で子供にあった特別教育が受けられるようになります。もちろんこれはアメリカに住む子供のことで、特別教育のない国では、これが当てはまりません。

 私達は前世代より賢くなっているのでしょうか。確かに子供とそのおじいさんをコンピューターゲームなどを使って比べてみたら、子供の方が賢く見えるでしょう。しかしながら、人間としての道徳や知恵の部分を比べて見ますと、年をとっている親や祖父母の方が賢そうです。ですから、子供も大人も賢くなっていそうです。200年前に生きていた人が現在のIQテストを受けたとしたら、点をとるのが大変であると思います。でも、200年前にIQテストが存在し、それを私達が受けようとするならば、歴史に詳しい人でも簡単であるとは思えません。それは、その時代、その場に相応した知識を持ち、そこでの問題をこなすのは難しいからです。と言うことは、私達は現代社会が提供する環境には、ますます生き慣れてきているように見えますが、人類としてはそれほど賢くなっていないかもしれません。少なくとも一世代で増える知能指数が示すほどではなさそうです。

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