気が散ることの良さ

| コメント(0) | トラックバック(0)

 もうすでに30年以上も使われている恐怖症を治すための心理セラピーのテクニックがあるんです。それは、恐怖症のある人にリラックスする方法を教えて、その状態を保ったまま恐怖の場面を頭に描くのです。最初は少しだけ怖い場面を想像し、それからだんだんと、もっと怖いことを想像していきます。これを何回か繰り返しているうちに、恐怖症が減っていきます。これは「リラックスしている間は不安を感じることがでにない」という原理を利用して不安を取り除こうとするテクニックなのです。

 ここで気が付いてほしい事は、私たちが二つの行動を同時に行う時、注意はそれぞれの行動に行ったり来たりし、各々の行動自体は、それに100 %集中している時に比べて、力が弱まります。エネルギーの分散もあることですから、それはしかたないでしょう。先に述べた恐怖症を治すテクニックもそのようなことが起こっているように思えます。リラックスをし、そして恐怖を感じ、そしてすぐまたリラックスをします。そうしていると、恐怖の強さも減るといったかたちです。

 同じく何十年も病院などで使われている作業療法というのがあります。精神病院での総合的治療の一部として用いられているわけですが、患者さんに工作をさせます。陶器を作らせたり、模型を作ってみたり、籠なども編んだりします。実際にやってみると、随分気が落ち着く作業だと思います。心の心配事が薄れていきます。こんなことでという印象が最初はあるのですが、結構効果があるので驚きます。

 この作業療法も二つの行動を同時にしていることが見えます。一つは悩みの心、すなわち思考や感情です。もう一つは手を主に使う作業です。でも、作業にある程度心が集中しないとよく出来ません。作業に気を配り、そして心で心配をし、また作業に気を配ります。そうしているうちに心の悩みの強さが減っていきます。私の患者さんの中にも、毛糸の編物をしながら心を落ち着けた人がいました。

 最近開発された心理セラピーテクニックで、さまざまなトラウマを治す方法があります。これは患者さんがトラウマの再体験をしている時、セラピストが患者さんの目の前で細い棒を、ちょうど自動車のウィンドウのワイパーのように右左、そして左右と行ったり来たり動かします。そうすることによってトラウマの痛みが減っていきます。いかにしてこんなことでトラウマが治るのか不思議に思いますが、これも考えて見れば、患者さんの注意がセラピストの棒からトラウマへ、そしてまたセラピストの棒へと移動していきます。そうしているうちにトラウマの力が減っていくのでしょうか。

 この他にも、これらに似たことでためになりそうなことが沢山あります。例えば、心が悩んでいる時に、それと同時に楽器を引くことや、そして悩みながらそのことについて作文や日記を書いてみること、または悩みながらもある本のテキストを自筆で写すことなどもいいです。悩み事について書くことは悩んでいるのと同じようには見えますが、実際に書く作業は随分悩み以外の心の注意が必要です。そうしているうちに心が休まっていきます。

  私の患者さんの一人で、悩み事があるとドライブに出かけてしまう人がいるんです。確かに心の注意が、ドライブから悩みへ、そしてドライブへと動きますから、効果があるのでしょう。でも、悩みながらの運転は危険でもありますから、皆さんは止めておいたほうがよでしょう。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.sweetnet.com/mt/mt-tb.cgi/163

コメントする

最近のブログ記事