ヒーローの運命

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アメリカに住んでいる人は、ニュースで既に何度も流れているのでご存知と思いますが、NYに新たに誕生したヒーローの話です。1月4日、NYの地下鉄で19歳の学生が発作を起こして電車が正に入って来ようとしていた線路に転落。それを見ていた二人の幼い娘を連れた黒人男性Autrey(construction worker)さんが、線路に飛び降り青年とともに線路の間に転がり、さらに青年の上に覆いかぶさったところに電車が進入、間一髪で二人とも無事だったという話です。電車は助けたAutreyさんの頭上数インチのところを掠めていたそうです。

Autreyさんは、そのまま仕事に向ったそうですが、後で助けた青年の見舞いに病院を訪れ、その後に感激した両親がニュース・レポーターに事の次第を伝え、Autreyさんは一躍ヒーローとして有名人となりました。

Autreyさんの行為に感動したドナルド・トランプ氏は1万ドルを授与、ウォルト・ディズニー社はテーマパークに招待、ニューヨーク・フィルム・アカデミーは子どものために奨学金2500ドルを授与、1年分の地下鉄ただ券、こどもと一緒にブロードウェーのライオンキングに招待、そして次から次へとテレビ出演に依頼されているということです。

“I did it out of a split-second reaction. And if I had to do it again, I probably would,” he said. “I was like, ’Wow, I got to go get this guy ... somebody’s gotta save this guy but I was the closest one."

“I’m still saying I’m not a hero ... ’cause I believe all New Yorkers should get into that type of mode,”

心から素晴らしい行いだと思います。幼い娘の目の前で見知らぬ人を救うために命をかけるなど、普通にできることではありません。本当に尊敬に値する人だと思います。

ただ以前、雑誌の特集で読んだのですが、このようにHeroと呼ばれる行為をした人に対して、メディアが殺到。一夜にして有名人になり人生を狂わせてしまった人が大変多いのだそうです。メディアも世間も忘れやすいものです。過剰なほどの注目が去った後、鬱状態になり最後には自殺してしまった人が少なくないのだそうです。

人間の心とは弱いもので一夜にして名声や富を手に入れてしまうと、おかしくなってしまう人が多いようです。(宝くじを当てた人たちの、その後を追跡すると結構不幸になってしまっている人が多いそうですし。)

Autreyさんの行為に感動して、その行為を讃え、惜しげもなく私財を寄付するアメリカの有名人や有名団体の行為は素晴らしいものだと思いますが、このお祭り騒ぎのような報道が素晴らしいハートを持って地道に生きてきたAutreyさんの人生を狂わせてしまわないことを祈るばかりです。

Autreyさんが、インタビューの中で I believe all New Yorkers should get into that type of mode.と言っていますが、ニューヨーカーは、江戸っ子が江戸っ子であることを誇りに思っているように、ニューヨーカーであることを大変誇りに思っています。ただ江戸っ子の場合は代々東京に住んできた人たちですが、ニューヨーカーは一代であろうと今住んでいればニューヨーカーです。

以前、こどもたちとマンハッタンの横断歩道を渡っていた時に、前を歩いていたお爺さんがポケットからコインをいくつも落としているのに気づかずに歩き続けていました。それで、私と子どもたちで拾い集めて、そのお爺さんに駆け寄って渡したのですが、それを見ていた、それこそ生粋のニューヨーカーっぽい黒人男性が周りに聞こえるように大きい声で「ニューヨーカーは、やっぱり正直者だよね。」と笑顔で言うのです。ちょっと気恥ずかしいような嬉しい気持ちでいっぱいになりました。そして、まったくニューヨーカーではない見た目も思いっきりアジアンな親子に、そういう言葉をかけるニューヨーカーは、さすがはニューヨーカーだと思いました。

自分の町に誇りを持つことが、人情と活気のある町にする鍵なのかもしれません。

そう言えば日本でも、私の兄の住んでいる町に行って感動したことがあります。東京から30分の埼玉のとある町。まずバスマナーの良さにびっくりしました。バスを降りるとき老若男女すべての人が運転手さんに「ありがとうございました。」と、はっきりした口調で挨拶して降りていくのです。さらに犬の公園に行くと、まず入って来た人が「お世話になります。」と軽く会釈してから犬を放します。帰る時は「お世話になりました。」と言って去るのです。

やはり、この町の住民が、自分たちのこのようなマナーの良さを誇りにしており、それが自然に子供たちにも新しく越して来た人にも良い意味で伝染しているのだと感じました。

コメント(2)

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SweetHeartさん、お疲れ様でした。もっと早く御知らせすれば良かったですね。すみません。それでは、テストも兼ねて・・・。

SHさんのおっしゃる、「自分の町に誇りを持つことが、人情と活気のある町にする鍵なのかもしれません。」というのは、全く同感です。
「ここはご近所の方が良い人ばかりだから・・。」なんて言われると、『自分も含めて言っていただいているのかしら』と背筋を正そうという気になります。町内会にしろ、学校にしろ、「かかわるのは面倒だ」という流れを変えていく(本当に自分自身も面倒だと思っているのか。そうではないかも。)と、どんどん良い方向に育つ可能性があるように思います。愛情を持って褒めて育てる・・子育てと似ていますね。

明快な理由がなくても「この町が好き」と言葉にするだけで、町が少しずつ輝いていくようにさえ思えます。

ハルさん。早速ありがとうございます!!コメントの問題も解決できて、とても嬉しいです。感謝感激です。

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