2007年03月17日

褒め方のコツ

今、発売中(2007年2月発行)の雑誌New Yorkの表紙のトップ・タイトル“Praise is dangerous”の記事が大変興味深いものでした。

アメリカの親たちは、とにかく自分の子どもを惜しげなく褒めます。以前も、メルマガに書いたことがありますが、これはアメリカの習慣とか伝統というものではなく、こどものSelf Esteem、いわゆる「自尊心を高めることの大切さ」が説かれるようになった、この20年位の間の傾向のようです。

子育ての方法にも時代ごとの傾向というものが存在し、ある時代は良いと言われたものが、別の時代には悪いと言われるようになることが、えてしてあるものです。一世風靡したドクタースポックの育児法しかり、英米などで一時主流になって廃れたCry-it-out(赤ちゃんは別室で寝かせ泣いてもとりあわない)という方法しかりです。

そして今回話題になったのが「こどもを褒める」ことの危険性というわけです。確かにアメリカの子どもたちは、何をやっても「Great! Good Boy! You are so smart!」などと親からも教師からも褒められまくれ、たとえば、こどものリトルリーグの打ち上げでも「盗塁NO.1」「参加率NO.1」「努力NO.1」などと、無理やり賞の名前をひねり出して全員がトロフィーをもらい、小学校を卒業するまでには、どの子の子ども部屋にも10~20個のトロフィーやメダルがゴロゴロ転がっています。

あるテレビの子育てに関するドキュメンタリーで、「80年代90年代に生まれた子は、常に褒められ、何でもないことでもトロフィーや賞状をもらって表彰されまくって、それが当たり前と思って育っているために、実社会に出てから自分の業績が上司に即座に認めてもらえないと、すぐに落ち込んだり、自分は評価されていないと思って会社を辞めてしまったりする傾向にある。」とレポートされていました。

また、今回の雑誌New Yorkによると、

実験で、5年生の子どもたちを二つのグループに分けパズルをやらせる。テスト終了後、一つのグループは「頭が良いね」というように知能を褒める。もう一つのグループは「一生懸命がんばったね。」というように、その子の能力ではなく努力を褒める。そして二回目のパズルでは子どもたちに二つの選択肢を与える。一つは前と同程度のレベルのパズル。もう一つは前よりも難しいパズル。すると努力を褒められたグループの90%が、難しいパズルの方を選んだが、知能を褒められた方のグループの大多数の子が簡単なパズルを選んだ。

というのです。研究者のDweckによると「能力を褒められた子どもたちは、頭を良く見せることに固執してしまい、リスクを冒そうとしない」のだそうです。

さらに、三回目のテストでは、7年生レベルの難易度のパズルをやらせた。全ての子が完成することができなかったが、努力を褒められたグループの子どもたちは、パズルに挑戦すること自体を楽しんでいたが、知能を褒められたグループの子どもは、あたかも、失敗することが自分たちの知能に関わる問題かのように緊張し、みじめだった。そして4回目のテストでは、最初のパズルと同レベルのものを与えた。努力を褒められたグループは30%スコアが上昇したが、知能を褒められたグループは最初のテストよりも約20%スコアが下降した。

ということです。

大変長い文章なので、興味のある方はOnlineに掲載されている記事を見つけたので、そちらで読んでください。
http://nymag.com/news/features/27840/

最後に、要点をまとめると、大切なのは褒める「勘所」です。ただ「上手だね、いい子だね、よくできたね、頭がいいね」ではなく、こどもの行為の過程や努力を的確に褒めるということです。たとえばサッカーなら「パスをよく見ていたね。」などです。

comments

  • ハル@米
  • 2007年03月17日 05:59

SHさん、またおもしろい記事の紹介をありがとうございます。
褒めちぎる文化への警鐘という事ですかね。
アメリカ育ちの我が息子も、自分が乱雑な字を書いているのにも関わらず、「書き直しなさい」というと、怒り出したりします。”You have to say good job." などと要求する事も・・・。その点、日本に帰ってきっとショックだろうなと常々想像しています。(笑)

話は少し逸れるのですが、「アメリカの小学校では、成績が良い生徒は授業内容に退屈し、その結果問題行動を起こす事が多い傾向」があるのでしょうか?小学校の先生をしている友人もその様に言いますし、giftedの子供を持つ友人も例外なくそのように言って少なからず悩んでいる様子です。
日本では、頭が良いから成績が良いからといって、そんな傾向はないですよね?(今は日本も変わってきているのでしょうか?)

そういえば、アメリカで高校教師をしている友人(日本人)も、「小さい頃から、貴方はスペシャルと言われ続けた子が、高校ぐらいで、授業についていけなくなり、その理由を教師のせいにする!褒めすぎは禁物!」と言っていました。

どんな時代にも、(たとえ戦争がなくても)育つ環境には危険な罠がいっぱいですね。私も試行錯誤で一回きりの子育てですが、少なくともナントカ式・ナントカメソッド信仰だけは避けたいと思います。

ハル@米


  • m1
  • 2007年03月19日 12:07

ハルさん、日本で成績のいい子の問題行動、聞いた事ありますよ。
アメリカのように褒めすぎで起こるような問題ではないと思いますが、中学受験の6年生とそうでない子供たちの問題です。
アメリカのケースと似ているとは思いますけど、塾へ行って授業内容をはるかに超えたことを勉強している子供は、クラスで授業をつまらないと感じているのです。先生を馬鹿にしきっているとか、授業の妨害(暇だから?)とか聞きました。

同じクラスでそれほど差がついては、先生も大変だと思いますし、どちらの側の生徒にしても、やりにくさはあるでしょうね。
でも頭がいい分(?)考えることも、より高度で単純ではないのでしょう。

褒めすぎで起こる弊害も学習進度や能力の差で起こる問題も、先生、親を悩ませますね。

  • はたにす
  • 2007年03月20日 10:18

こんにちは。実は数日前に同じような記事を他で読んで、あまりに内容が似ているので驚きました!

ということで、オンラインのサイトをちらりとのぞいてみたら、同じ心理学者の方の話がでていたので、納得しました。(読んだ記事は彼女が現在在籍する大学の卒業生向けの月刊誌でした。)

New York誌のほうはまだちゃんと読んでいませんが、確かに周囲も自分も一生懸命子供をほめてはいるけれど、それだけで安心しているところがあるのでは、、、と思いました。
とても興味ある話題ですね。

ところで、Cry−Outはもうすでに廃れているんですか?私は上の子が赤ちゃんのとき(まだ8年ほど前)に親戚をはじめ、多くの人に勧められて、ほとほと困っていたんですけどね、、、。

  • ちゃこ
  • 2007年03月27日 00:53

本当にアメリカ人って自分の子供を誉めますよね。うちの義両親なんて今でも旦那の事を「I am so proud of you」なんて誉めてます。だから、今でも(もう40歳)誉められないと駄目ですよ。なんだか小学生の息子よりも始末におえない(苦笑)。

日本の小学生と塾の関係ですが、これは日本の小学校の先生にも問題があるかもしれない、って思っています。と、言うのは最近うちは日本に帰国して、某塾(難関私立中学への合格率が高いのを売りにしている)の体験授業を受けたのですが、低学年の息子が「学校の先生の授業よりも分かり易かった。」って言ってました。

うちの息子はアメリカ生まれのアメリカ育ちで、日本語は理解は出来るけど、読み書きは同学年の子供達に比べると格段に劣ります。それでも、塾の先生の方が分かり易い、って言うのは...。って思ってしまいました。

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