尿漏れ治療手術

MiniArc法(TVT)手術体験記

2009年2月 尿漏れ(腹圧性尿失禁)を治療するため、現段階では最新のMiniArcという手術を受けました。

手術は日帰りで、術後の痛みもほとんどなく、術日からほとんど普通に歩くことができ、手術の翌日からは既に尿漏れがなくなりました。

尿漏れに関しては、最近日本のメディアでも取り上げられる機会が多くなってきたようですが、まだまだ手術の詳細は日本語サイトでは非常に少なく、実際の手術体験者の意見は、ほとんど見つけることができませんでした。シモのことで恥ずかしいこと、という意識もまだ高いからなのかもしれません。

ですので、非常にプライベートな情報ではありますが、尿漏れに悩む方のために私の体験を公開したいと思います。

出産経験は2度。第二子を出産したのが1996年です。いつ頃から尿漏れが始まったのだろうと考えたのですが、2002年頃まではテニスコートを駆け回っても全く問題なかったので、多分2004年頃からだったと思います。ただ、思い出すのは次男を妊娠中に何度かトイレが間に合わないようなことがあったので、その頃から異常はあったのかもしれません。

尿もれも最初の頃は、くしゃみをした時に少し漏れる程度だったのが、その内、笑った時に、走った時にと少しずつ漏れる機会が多くなって行きました。最初の頃は極薄い整理用ナプキンで間に合っていたのに、ついに尿漏れパッドを使用。そして、どんどんより分厚いものが必要になり、一日に代えなければならない頻度も増えて行きました。

ホルモンの関係なのか生理後には、パッドなしで過ごせる日もありましたが、排卵日を過ぎる頃からがいつも最悪で、買い物なので長時間外を歩く時は、ズボンに染み出してこないかと心配で仕方がありませんでした。

10年ほど前に知り合いの方が30代で尿漏れの手術をして、簡単な手術と言われていたのに、経過が悪く2~3ヶ月寝込んでいたのを見ていたので、手術は、よっぽどひどくなってしまった時の最後の手段と思いながらも、尿漏れが確実に悪化して行くにしたがって時折ネットで泌尿器科の専門サイトや医療雑誌などをチェックしていました。

情報を探しながら、特にこの数年で、この分野での技術が格段に進歩していると感じていました。特に2007年頃からアメリカで行われるようになったMiniArcという最新の手術方法は、傷が最小限で術後の回復も格段に早い上に治癒率94%という記述を読み、大変興味を抱きました。(膣の中のみの極小さな切開になります。)

この手術は総称してMini-sling procedureと呼ばれています。私の受けたMiniArcと似たような手術でジョンソン&ジョンソン社が開発したTVT-Secure.という方法もあるようです。

さらに調べたところ、ごく近くに、まだ数少ないMiniArc法のエキスパートの女医さんがいることがわかり、アポを取ってみることにしました。

初めて電話をしたのが2008年9月でしたが、なんと12月まで予約がいっぱいということで驚きました。それだけ人気のある腕の良い先生に違いないと確信しました。電話ではいくつかのテストをするので4日にわたって来院するようにとのことで4日分の予約を入れました。

そして待つこと3ヶ月

1日目 面接
先生は30代の笑顔がとても素敵な女医さん。100%好感が持てました。私の症状をじっくりと聞いた後、尿漏れの原因や、現在行われている幾つかの治療法のオプションについて、たっぷり時間を取って説明してくれました。

オプションの中には、とんでもなく重たいゴムのようなものでできた直系10センチ位の円盤状のものを自分で排尿の度に出したり入れたりする方法。尿道の周りの壁にコラーゲンを定期的に注射するというもの、光照射でコラーゲンの生成を促す等々、あまり現実的でないオプションも含まれていました。

一応、医者の義務として全てのオプションを患者に提示しなければいけないのだそうです。


2日目 テスト 尿道から内視鏡のようなもので膀胱を見るなどのテスト
3日目 テスト 尿道に管を入れて、膀胱に水を注入し、その後、尿をどれくらい我慢できるか、どの位の圧力に耐えられるかなどを観察します。

このテストが一番不快でした。テストが終わった後も、尿道に少し焼けるような痛みがありました。痛み止めの処方箋もくれましたが、あまり不必要に薬を飲むのは嫌なので我慢して帰宅後すぐに数時間寝た後はすっきり回復しました。

4日目 面接 
夫と一緒に最終的なテスト結果を聞き、その場で手術することを決めました。

念のため、夫が病院関係の知り合いに聞いたところ、Dr.は大変評判の良い医者だとの評判もあり、また既にこの手術を100回以上行っているということで、さらに安心して彼女に決めることができました。

手術に際して、日米の情報を色々集めてみて思ったのは、日本では、尿漏れの話題はタブー、手術もよっぽど年を取ってからという印象でした。それに比べ、アメリカ人はやはりオープンだと感じましたし、手術の理由も「年をとっていないからこそ受ける」という姿勢の方が多いようです。次男の友達のお母さんも一昨年の夏同じ手術を受けたということで情報をもらったのですが、彼女も、”Too young to have that kind of problem.”と励ましてくれました。(彼女は、180センチ以上という長身で、子どもがまた大きくて10歳の時点で既に16歳以上に見えます。生まれた時から巨大児で、彼女いわく肛門までベリベリに裂けてしまい、ひどい時は大の方もコントロールできなかったと笑いながらしゃべってくれました。さすがアメリカ人はオープンだと思います。)

手術は、2月に決定。

手術3日前
Dr.が契約している総合病院で血液、レントゲン検査などを行いました(長男を出産した病院)。その検査結果は私のかかりつけのFamilyドクターに回され、そのドクターがDr.に対して手術ができる健康状態であるとのGOサインを出します。3つもテストをするので一日がかりかと覚悟していたのですが、前日に総合病院から電話があり、全ての個人情報を既に伝えてあったので、ペーパーワークもほとんどなく、次から次へと検査を受けて2時間位で全てが終わりました。病院の人達の対応も、ここは本当にアメリカの病院か?と思うほど、素晴らしかったです。

当日
7時半に病院着。(術後24時間18歳以上の車の運転できる成人の付き添いが必要。)ナースが基本情報の確認や血圧チェック、IVの挿入。30分後に手術服を着たDR.が笑顔で登場。麻酔医も笑顔で登場して自己紹介。5分後手術室へ。全身麻酔で後は記憶になし。手術自体は15~30分程度で終了とのこと。(Dr.はこの日にまとめて数人に同じ手術をするそうです。)11時半、麻酔から目覚める。ジュースをもらう。尿道にカテーテルが入っている状態。痛みゼロ。ナースに、これからカテーテルをはずして、トイレでちゃんと尿が出たら、そのまま帰宅だけれど、尿が出なかったらカテーテルをつけたまま帰宅して、明日再び病院に来る必要があると言われました。

カテーテルを通して膀胱に水をいっぱいに入れられる。尿意を我慢できなくなったら呼んでねと言われ、10分位で我慢できなくなったので、ナースを呼んでトイレに連れて行ってもらいました。

無事に尿が全部出ました。

眠気が完全に覚めるら帰っていいと言われ、それから30分ほど休んでから、夫が病院の玄関に車を回し、ナースが車椅子で玄関まで見送り。

痛みは、この時点でもゼロ。

朝から何も食べていなかったので、夫とそのまま近くのタイ・レストランによってランチ。(それほど痛みはなく元気で普通の状態でした)。帰宅。30分メールのチェックなどしてからベッドへ。30分以上座っていると多少、足の付け根が痛む程度。

寝ていても足の付け根が痛むが、これは手術の時に足を持ち上げているために起こる痛みとのこと。(全身麻酔なのでベッドに普通に横たわった後のことは全然わからないけれど、結構とんでもない格好で手術をするんだろうと思う。)

薬は、痛み止めと、腫れを抑えるものと抗生物質の3種類をもらいましたが痛みがないので痛み止めだけ飲みませんでした。

翌日から既にシャワーもOK。10ポンド以上のものを持ち上げないようにすること。それ以外は普通に生活してもいいとのこと。ウォーキングなど、どんどんしてよいとのこと。次のアポは2週間後と言われました。

足の付け根の痛みは翌々日には全くなくなりました。大きなくしゃみをしても全く尿漏れは全くなくなり、とても快適。(人によっては、完全に尿漏れがなくなるまで数週間かかる人もいるそうです。)ただ4日目に突然朝起きて尿の出が悪くなりました。DRに電話を入れたところ、すぐにオフィスでチェックしましょうと言うことで、オフィスで管を通して残尿量のチェック。その結果、やはり尿がうまく出ていないということ。原因は、術後、尿道が腫れているためか、手術中の麻酔で尿道の力が一時的に弱まるからだそうです。ネットで調べたところ、やはりよくある現象だとの記述もあり少し安心しました。まれにメッシュを締めすぎたために起こることもあり、その場合は、メッシュを少し切って緩めるそうです。ただ、そうすると再び尿漏れのリスクもあるとのことでした。また尿道の働きを良くするという薬も処方してもらいました。


翌日が週末で休診日なので先生がくれた選択肢は、カテーテルをつけたまま家に帰る、カテーテルを持ち帰って尿が出なくなった時は自分で入れて尿を出す、とのことで私は後者は選びました。

幸いなことに尿の出は数日で改善しました。自分でカテーテルを尿道に入れる自信がなかったので、本当に良かったです。排尿時にいきむと却っていけないとのことででした。一時的に尿意が多くなる日もありました。

術後6週間で完治となるとのことで、6週間検診も無事終わりました。尿の出は以前より勢いがなくなった感じで、排尿に以前より多少時間がかかりますが、苦になるほどでは全然ありません。それよりも何よりも、くしゃみをしても思い切り笑っても走ってもジャンプしても尿漏れゼロでトイレの心配を全くしなくてよくなったことが一番です。

唯一の後悔は、こんなに簡単な手術なら、もっと早く受ければよかった!と言うことくらいでしょうか(笑)。ただ、この手術方法が確立したのが、ごく最近のことですから、やはり待って正解だったのだと思います。

DR.いわく、この手術を受ける人は早くて20代の人もいるそうですが、通常はもう出産しないと決めた人にお薦めだそうです。成功率は97%だそうです。

http://www.miklosandmoore.com/mini_sling.php

http://www.youtube.com/watch?v=clgdMqqskrA


そもそも私の尿漏れがここまでひどくなったのは、絶対に第1子の出産後のガードルとニッパーにあったと思っています。ちなみに私の母は2人出産していて今はかなりの高齢ですが、尿漏れは一度も経験したことがないということでした。

私はとにかく体型を早く元に戻したいと思って、出産後、すぐにガードルとニッパーをしました。かなりキツク感じ不快でしたが、頑張り屋の性格が裏目に出て、「きつく感じるのはウエストか締まっている証拠!」と思いギューギューと締め続けました。そして、第二子の妊娠中3〜4ヶ月の頃に尿漏れが始まりました。

そのころ、こちらのサイトで本当は締めなければいけないかったのは骨盤だったのだと知りました。そして「皮や肉をいくら締めても細くはならない」「お腹を締めると骨盤が開いてしまう。」 という記述を読んで、こんな、理論的に考えてみたら当たり前のことにやっと気づいたのです。産後ニッパーやガードル、リフォーム下着など早く元通りの体型に戻りたいという女心をくすぐって売られている商品に腹が立ちます。

私の場合、尿漏れ対策は手遅れでしたが、トコちゃんベルトによって、10代の頃からあった腰痛が嘘のようになくなったという大きな恩恵があります。これは本当に不思議なほどの効き目です。今でも腰痛が出たと思った時にベルトをつけると30分以内に全く痛みがなくなります。驚いたのは高齢の母と父の腰痛にも効いたことです。母の場合は足のつま先まで出て辛そうだった痺れがベルトを初めて半年ですっかりなくなったそうです。今では二人の散歩に欠かせないアイテムになってます。さらに副産物としてですが、便秘知らずになりました。不思議と朝トコちゃんベルトを巻くとお通じがスルッとあります。

話を、尿漏れ手術に戻して・・・、私の手術の数年後に親しい友人も手術を受けました。彼女は別の医者で受けましたが、私とほとんど同じような経過をたどり、手術翌日から快調で、「私ももっと早く受ければよかった。母にも絶対に薦める」と言っていました。

本当に、尿漏れの手術を受けると生活の質が劇的に向上します。私を執刀してくださった先生がおっしゃっていたように「年をとっていないからこそ受ける」手術だと思います。

日本でも、受けられる場所が徐々にですが増えているようです。検索してみたら、以下のような場所でやっているようです。他にもあるかもしれませんが、是非もんもんと悩まずに一歩を踏み出してください。尿が漏れるのを心配せずに大声で笑える生活を取り戻してください。

梅田ガーデンシティ女性クリニック(大阪市)
東京女子医科大学東医療センター
赤十字病院の女性泌尿器科
女性医療クリニックLUNA

検索するのであれば、女性泌尿器、骨盤底外科で。