インタビューに答えてくださった方:松田 幸都枝(こずえ) さん(日本Autism Partnership Tokyo代表)

シドニー大学、初等教育科で特別教育を専攻し、在学中は大学内に設置されているChildrenセンターにて、ホワイト博士の元、発達障害のあるおこさんたちと接する。卒業後、現地また日本のインターナショナルスクールにておいて教える。夫の転勤のため欧州に駐在、近年東京に戻る。

Autism Partnership Tokyoについて簡単にご説明いただけますか?また松田さんがAPの仕事をするにいたった経緯なども教えていただけますでしょうか。

Autism Partnership (オーティズム・パートナーシップ)は、米国UCLA大学でローバス博士の下、博士号をとった、ドナルド・リーフ博士、ジョン・マカキン博士により、ロスアンジェルスで設立されて以来、英国、香港、イスラエル、シンガポールなどでサービスを展開しています。

日本では、米国はもちろん、香港、シンガポールよりすでに長年Autism Partnership にて活躍しているスーパーバイザーが来日し、(近日、駐在予定)、日本人セラピストへの厳しい研修、おこさんのプログラムを作成いたします。その後も、月に1度のクリニカルミーティングでおこさんの発達を検討いたします。

私がAutism Partnership の仕事をするようになったのは、セラピストとして雇用してくれないか、とお願いしたことがきっかけです。私自身、子どものころ、「自閉症のため、10歳までは生きません」と診断されました。(そんなことは全くありません。しかし当時のその医師は私の親にそう告げました。)

再婚、高齢出産の私の両親は、非常にショックをうけ、全財産をつぎこんで、療育。。。ではなく、旅行にいきました。(笑)その旅行先で、私の具合が悪化し、ハワイのチルドレンホスピタルに入院。そこではじめて別の診断を受けました。

私が受けたような大きく間違えた診断をなさる医師の方も、教育関係の方も日本ではすでに皆無だとおもいます。しかし、自閉症と診断されただけで、ほかに何のすべもなくいる方のお力になりたいと思いました。

 

応用行動分析療法(ABA)について、ごく簡単に説明してくださいますか?特に他の既存の療法との違いがありますか?

ABAは、70年代、米国UCLA大学の心理学者、ローバス博士により開発されました。行動とは、その後の事象により、シェイプされ、その経験をもとに、学習するということです。一般的には、早期介入、集中介入ということでトレーニングは知られています。

ABAが他のセラピーや療法と違うところは、科学的研究の立証、裏づけがあるということです。行動の分析をするため、セラピーでは記録を必ずとります。データをとり、行動が向上しているのか、問題があるのか、を分析するためです。

 

ABAは日本での昔ながらの自閉症の観念のままでは受けづらい・・・とメールでやりとりした中で書かれていましたが、日本での昔ながらの観念とはどういうものですか?

ABAのトレーニングは、多くの場合、まず、お子さんが問題行動を起こす場所(通常はご自宅)で開始されます。また集中介入ということですので、ほぼ毎日(東京のサービスでは月曜〜金曜)セラピストが自宅にいき、通常3時間のセラピーを受けます。

日本では、ご自宅に先生が毎日それほどの長い時間くることは、受験期のお子さん以外あまりないケースだと思います。

こうした療育は、診断とともに、自動的に療育センターに通うことになってしまうという概念が日本では通例であると思いますので、なかなか受け入れられにくいのではという懸念があります。また民間事業でありますので、重要な点としてコストの面もあります。

Autism Partnership Tokyo では、米国をはじめとするその他の支局の支援により、サービス提供額が最低限にしてあります。しかし、Autism Partnership Tokyo が国からの補助や支援が得られるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。

 

Autism Partnership が他のエイジェントより優れている点とは?

セラピストの質です。Autism Partnership は、毎年世界の支局が集まり研究会をして、いかに楽しく、いかに効果的に、こどもたちが学べるか、ということを目指しています。

ABAというと、70年代の厳しいトレーニングを想定する方が多いかと思いますが、Autism Partnership では、プログラムも常に進歩し、セラピストたちも常に学習しなければなりません。

また、日本においてセラピストを選出する際に最優先したことは、学歴(大学院などでの臨床心理資格)よりも、まずは子どもが好きか、という点です。

幸いなことに、その両方を兼ね備えている方もいらっしゃいます。

 

自閉症に対する世の中の誤解は色々あると思いますが、最もよくありがちな誤解は、どんなものでしょう。いくつか挙げていただけますか。

自閉症に関するは、誤解はたくさんあります。「自閉症」という言葉は、大変大きな枠組みをさします。最もありがちな誤解は、「この人(この子ども)は、頭が悪く、これ以上のことはできない」と家族もはじめ、医師、学校、周囲全体が、教育をあきらめてしまう点であると思います。

また、普通学級に進学でき学業では問題がなくても、「あのこ、ちょっとかわっている」という点から、いじめの対象になり、なぜその生徒が社交的な部分でかけているのか、コミュニケーションがとれないのか、理解してそれを解決しようという動きがみられることは少なく感じます。



自閉症のお子さんがいる母親に対して、周りの人達はどんなサポートができるでしょうか。

自閉症のお子さんがいるご家族は、悩みをもっている方も多くいらっしゃいます。

偏食、睡眠障害、トイレトレーニングなどの自立の困難さ、お友達が少ない、言葉が少ない、など誰にも相談ができずにいらっしゃる方は少なくありません。

まずは、理解をして差し上げてほしいと思います。そして、そのおこさんだけ「特別」という枠にいれず、普通に接していただきたいと思います。

お子さんへの教育方針は、その家庭さまざまなので、一概に、これをするといいです、というサポートはありません。しかし、同情などではなく、普通に接してもらうことを、私が親であれば望むと思います。(この質問に関しては、ほんとうにさまざまなので、個人の意見として受け止めてください。)



日本での自閉症の取り組み方は自閉症取り組み先進国(アメリカでしょうか?)に比べて顕著な遅れはありますか?

日本では、一般的に「自閉症の方に、社会を合わせてあげよう!」とする動きが強いように思えます。確かに、日本では、重度の方に対しては社会保障が充実し、職業がつけるようなトレーニングなど、大変に充実したすばらしい点があります。しかし、「自閉症」という言葉の認識が浅く、まさか普通学級に自閉症スペクトラムのお子さんがいらっしゃるとご存知の方が少ないように思えます。こうした方々は、地域の療育センターなどでも「知能が高い」「言葉がでている」という点で、あまりサービスを受けられないのが現状です。

最近では、週に1度などの割りで、こうした普通学級に行っていらっしゃるお子さんを対象に、地域や行政が、楽しいグループ指導を行っているすばらしい地域もあります。しかし、まだまだその数や頻度が少ないことは否めません。

米国、英国では、普通学級にいるお子さんで、学習やその他の面で遅延がみられるお子さんは、特別学級として授業を週に何回か個別に受けることがあります。(もちろん、日本でも盛んに行われて、成果を挙げていると思います。)ここで最も大きく違うと思うことは、「保護者の方の期待度」です。

米国、英国では、こうした特別学級にいるにも関わらず、進度か遅く成果が見られない場合、保護者の方が学校側に対して、強い要求を出します。中には訴訟問題に発展するケースもあります。

日本の保護者の方にそうなってほしいということではありません。しかし、学校で実際何を学習してきているのか、とくにおこさんに発達障害があるのであればそうした認識が、保護者にとって今後必要でないかと思います。

 

松田さんがAutisum Partnership Tokyo を通して目指すものはなんでしょう?

自閉症という言葉を受け、どうしていいかわからないご家族の方に、ひとつの選択としてサービスをご提供できればと思います。

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